03:鬼



「死を見よ」



誰かが問うた。



「死を恐れるな」






なんとも、叩き付けられた言葉だろう。
幾度も、幾度も、繰り返される。



腕を伝う、生臭い混じり合った血。
嫌なぐらい刃がギラギラ光っている。

「こんなにも見ているのに?」

辺りには散らばった、頭、目、足、手、腸…。
土はどっぷりと体液を吸い、紅く笑っている。
気が付けば服にも染み付いて、乾いた部分が硬い。






「これ以上、何を求める?」
そう、これ以上の死を    
「何を?」
「そうだ。何を求めているのだ」
けれど、声は嘲笑った。
闇に響く、耳障りな、声。



「何を……などと、聞く意味もあるまい」

ゆらゆら、闇が紅く揺れた。









「汝は鬼だ」









    鬼。






「私は人だ」
「いや、鬼だ」
声は言う。






「姿は人と変わらずしても、心はもはや鬼であろう?」









「さぁ、求めよ    死を求め」



殺セ。



「我が、忠実なる僕…」






「貴様      



奥歯を噛みしめる、音。
ギリギリと、苦く、甘い血の味がする。









「誰も止められぬ。何人も  止められぬ」






紅く染マリシ人の子ハ。






死ヲ求む鬼とナル。






Demon - - 鬼
狂ってしまえ。血の味が甘美になるほどに。