八方尾根回想 '93夏

 

 八方尾根を唐松岳まで往復したのは、1993年の夏でした。
残念ながら、このときの山行記録は残っておらず、写真を頼りに回想してみます(1999年6月記述)。


 名古屋駅で京都の友人と合流し、夜行列車で松本へ。そこから普通列車で白馬村へ入りました。下山後に宿泊する予定の宿に荷物を置かせてもらい、水筒の水を満タンにして、八方スキー場のゴンドラ乗り場へ向かいます。そこからゴンドラとリフトを乗り継いで、楽をして尾根の稜線にたどり着きました。手軽なために登山者よりもむしろ観光客が多く、ごく普通の恰好で沢山の人が登っていきます。残雪のある場所もあったりして、夏真っ盛りにはもってこいの観光地でもあるようです。まずまずの天候で、行く手には北アルプス後立山連峰の峰々が見渡せ、後方には信越国境付近の山や遠く浅間山などが見えています。

雨飾山、焼山、火打山、妙高山、高妻山など

眼下に白馬村、右奥には四阿山と浅間山


 やがて八方池に到着します。結構大勢の人がいますが、やはり多くは観光客のようです。ここでは、北側に白馬三山がアルペン的な様相を惜しげも無く見せ、南側には五竜岳と鹿島槍ヶ岳が堂々たる姿を並べ、素晴らしい山岳景観を楽しむことができました。

八方池(八方尾根の稜線上にある)

八方池付近から見た
白馬三山(鑓ヶ岳、杓子岳、白馬岳)

鹿島槍ヶ岳と五竜岳
鹿島槍山頂が双耳峰であることがよくわかる

右は白馬鑓ヶ岳をズームアップしたところ→

     

 八方池から上は登山者の領域といって良いでしょう。雪渓やお花畑の横を通り、ちょっとした樹林帯を抜け、いよいと尾根の頂点が近づいてきました。崖に足場が組まれ鎖の付けられた、ややヒヤリとする箇所を通りすぎると、北アルプスの主稜線へとたどり着きます。すると目の前には、立山連峰〜劔岳がドーンと姿を現します。その左手には薬師岳なども見えているようです。しかし、このとき空は曇り始めていました。

立山〜別山、そして劔岳

 この日宿泊予定の唐松山荘はすぐそこにあります。早速宿泊手続きをしますが、宿泊者が多く、別館の2段ベッドの上段に、二人で1畳程のささやかな寝床を確保することができました。そこに荷物を置いて、空身で唐松岳に向かいました。唐松岳の山頂からは、八方尾根でこれまで見てきた山々が見渡せます。五竜岳の方向を見ると、その右手後方に小さなトンガリが見えます。そうです槍ヶ岳でした。白馬岳の方向には、難所として知られる不帰キレットが見えています。

 

唐松岳からみた五竜岳

五竜岳の右奥に槍ヶ岳が!

唐松岳から見た不帰キレット方面

 山荘に戻り夕食をとると、もはや眠るしかありません。窮屈な寝床でとにかく横になります。熟睡できないでいると、外は相当強い風が吹いているらしく、風の音がうなっています。
 朝目覚めるとやはり雨でした。しかも尾根上は強風です。予定では五竜岳へ登り、遠見尾根を下るつもりでした。しかし、この天候での稜線歩きは危険であると誰かがアドバイスしてくれました。仕方がありません、潔くあきらめることにしました。下山です。小屋には昼食用の弁当をお願いしてありましたので、それを受け取りザックに詰めて出発です。ずぶ濡れになりながら、昨日たどってきた八方尾根を下って行きました。八方尾根にはほとんど樹林が無く、途中唯一の樹林帯で昼食にしようかと思いましたが、時間がまだ早くて先に進みました。八方池の横を通ると、水が増して周遊路が水没していました。結局八方山荘まで下り、そこで場所を借りて昼食となりました。あとは、リフトとゴンドラを乗り継いで下界に到着です。

 こうして、展望〜大雨の山行は終結しました。
 下山後、白馬村の温泉に浸かって冷えて疲れた体を癒し、宿に帰りました。今思えば、雨に打たれて下山したことも良い思い出となり、いつか今度は、五竜岳へも行ってみたいなと思っています。また、八方尾根自体は好展望の場所として、すべての展望ファンに推薦することができます。私も久しく山へは行って居りませんが、復帰するにはこうした山も良いのではと思う今日この頃です(1999.6.13)

 

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