富士山を探せ!!on蛇峠山 '96秋

 

1.蛇峠山(じゃとうげやま)について

 さて、何故この山が話題になっているのか。またどこにあるどういう山なのかわからない方がいらっしゃると思いますので、簡単に紹介します。

 場所は南信州、浪合村・平谷村・阿南町の3つの町村境界に位置します。標高は1664m。この付近では北西に1908mの大川入山がそびえている他 には遮る山がありません。山頂もNTTの電波塔や建設省のレーダー、あるいは信玄ののろし場跡があるなど、その見通しの良さを裏付けています。広くて公園のような雰囲気のところで、南アルプスの大パノラマなど素晴らしい展望を得ることができます。

 この山が話題になったのは、何を隠そうこの私が2年前の10月に訪れたの が最初です。そうFYAMAPが開設される直前でした。開設直後にその報告 をしましたが、そのときには視界が悪くて展望は得られませんでした。けれど もこの山を知ったきっかけが話題になりました。

 私がこの山を知ったのは、深田久弥著『山頂の憩い』(朝日文庫)の後記か らです。近藤信行氏が「深田久弥・その山と文学」というタイトルで書き記し た文章の中に、蛇峠山のエピソードが登場します。深田久弥氏は亡くなられるその年の正月にこの山へ訪れていました。そして南アルプスの高峰群の大観に遭遇し、それらの峰に足跡を残したことに感慨深いものがあったようです。私はこのエピソードが深く心に残りましたし、またこの山が素晴らしい展望地であることを確信したのです。

 実際にこの展望が報告されたのは翌年の5月でした。山紫さんがGWに訪れ て南アルプスなどの大展望をものにし報告されています。私が初めて遭遇でき たのは、昨年11月のもみじ平オフにおいてでした。すなわちオフ参加者の皆 さんとともに、この素晴らしい展望を共有することができたのです。雪化粧を した南アルプスの巨人たちは、あまりにも美しく偉大でした。

 このオフの前にちょっとした話題が飛び出しました。富士山可視マップを見 ると、この蛇峠山にわずかに可視ポイントがあるらしいのです。それはかなり 微妙なものであくまでも数値地図による計算の上でです。当広場顧問のWal さんは逆に富士山から撮影した写真判定から、見えないという可能性を示唆さ れました。机上の計算上でも結論が二転三転し、実際にはわからないという状 態だったのです。もみじ平オフにおいても富士山を発見することはできません でした(見えるという話しも飛び出ましたが・・・)。

 最近の論議では、TYFさんが詳細な検証をされ、1664mの頂上からは 見えないという意見が出ました。しかしその後、広い山頂部の一部では見える 可能性があることもわかりました。けれどかなりきわどいもので、手前の稜線 に樹木があるはずだから見えないという可能性も高かったのです。

 そんなわけで、今回私が実地検証に向かったのです。  幸い前日に富士山の初冠雪が観測され、高気圧の影響ですっきりした秋晴れ も期待できます。手前の南アルプスの稜線にまで雪が着くと判別が難しくなり ますので、ひとつのチャンスでありました。

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茶臼山

大川入山

御岳

乗鞍岳

穂高連峰

中央アルプス

蓼科山〜八ヶ岳連峰、南アルプス北部(鋸山、仙丈岳)

南アルプス北中部(北岳、間ノ岳、農鳥岳、塩見岳)

南アルプス中南部(荒川岳、赤石岳、聖岳)

南アルプス南部(上河内岳、光岳)

 

2.蛇峠山からの大展望

 9/28日。朝5時に起床。5:30には荷物を愛車ジムニーに積んで可児 の自宅を出発しました。空には雲もなく好展望を予感させます。途中で食料な どを買いながら、治部坂高原に着いたのは7:30頃でした。駐車場も閑散と しています。朝の高原を抜けて馬の背までクルマで上がります。途中から大川 入山がすっきりと見え、また遠くにはナント穂高連峰が見えています。

 馬の背に着くと先客が1台到着したばかりのようでした。私も8:00前に は山頂へ向けて歩きだしました。南西方向が曇っていてちょっと心配です。け れども南側の茶臼山と萩太郎山がくっきりと近く見えます。空気が澄んでいる 証拠です。山頂まで展望は開けませんので、祈るような気持ちで向かいます。

 8:30前にレーダーなどの建造物がある場所に着きました。おぉ!南アル プスがよく見えます。これはと思い展望板のある場所へ行き、富士山が見える という「窓」の位置を双眼鏡で覗きます。うーん、見えません。

 仕方がないので、2mの高さが好結果を生むかもしれない展望台へと走りま す。いったん鞍部に下り登り返しますので息が切れました。けれどもここでも 何も見えません。双眼鏡で覗くと窓の稜線に樹木らしきものが見えます。やは りこれが障害になるかもしれません。

 それにしても他の山の眺望の素晴らしいこと。北西に大川入山が聳え、その 背後に恵那山が覗いています。その右に富士見台があり背後には巨大な御嶽が 鎮座します。その右には乗鞍岳・穂高連峰、そして中央アルプスが縦に並びま す。三沢岳・木曽駒ヶ岳・宝剣岳が並び、手前には南駒ヶ岳が大きく空木岳は 見えません。その右には蓼科山から八ヶ岳連峰が続いています。一部手前にあ る入笠山に隠されています。そしてその右が鋸岳に始まる南アルプスの巨峰群 のパノラマです。

 どの山もまだ雪は着いていない様子です。富士山だけが冠雪している絶好の 機会なのに、姿が見えないのが悔しくありました。まだ朝で太陽光の角度も影 響するかも知れないと考え、見える可能性が高いという展望板の場所まで戻る ことにしました。そこで朝食タイムとし、しばらく粘ることにします。

 もし見えないとあまりにも残念なので、他の山の写真を撮りました。そして 乗鞍岳右に笠ヶ岳が見えること、展望板の表記に前穂高を槍ヶ岳と誤記してあ ることなどを発見しました。見えないはずの甲斐駒ヶ岳の誤記は昨年指摘され たとおりです。悪沢岳も荒川岳に隠れて見えません。

 そんなことをしていたら10:30を過ぎました。窓を覗くとやはり何も見 えていません。やはり無理か。少し落胆し、見えない証拠写真を撮りました。 そして荷物を片付けて帰る準備を始めました。

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3.富士山発見?!

 あぁ、帰ってどういう書き込みをしようか。もうそのことが頭をよぎってい ます。笠ヶ岳や展望板の話しで濁しておこうと思いました(^^;

 展望板からさらに北側に踏み跡がります。それは数メートルは低い地点で、 条件はさらに厳しくなるのは間違いありません。何を思ったか、双眼鏡だけを 持ってそちらへ行ってみました。そして双眼鏡を窓に合わせます。

 「ん?!」「何か白いモノが?」「富士山に違いない!!」

 思わず「見えるぞ」と声が出た瞬間です(^^)  慌ててカメラを取りに戻ります。その地点にカメラをセットしファインダー を覗いて焦点を合わせまが、手が震えて思うように操作できません。ようやく 焦点が合うと樹木らしきものの左に白く輝くモノがあります。レンズのゴミで は無いだろうと双眼鏡で再確認。やはり同じ位置に白いモノがあります。あと はシャッターを夢中で切ります。先に10:30頃と報告しましたが、写真を 見ると10:49に記録されていました。カメラ時計は10分程進んでいまし たので、実際には10:39頃です。

 馬鹿な私はもう見えないものと思って、余計な写真でフィルムを消費してい ました。ネガ4本とポジ1本しか用意がなく、すでにネガ3本目の途中までを 使っていました。とにかく残ったフィルムでこの証拠を撮ります。

 今回使ったレンズが通信販売の粗悪レンズでして、500〜1000mmと いう焦点距離ではありますが、極めて暗くしかもフォーカスがかなりシビアな 代物ときています。しかも画像の中心部にしかピントがきません。こんなもの で証拠写真が撮れるのか心配しながら、焦点距離やフォーカスを何度も変えて 撮りました。また雲では無い証拠として、少し時間を経過してからも撮ってみ ました。他に持参した28−105mmと70−300mmでは、どうしても その白いモノをとらえられなかったのです。

 ネガフィルムをついに使い切りました。でもこれで十分と思い今度こそ帰る 支度をしました。そして歩き始め、また何を思ったのか「のろし場」地点にて 双眼鏡を覗きます。おや、ここからも見え方は違いますが白いモノは見えるよ うです。迷いました。あとはISO50のポジが1本あるのみ。粗悪レンズで 撮影できるだろうか。いやダメもとです。また荷物を降ろして撮ることにしま した。そして今なら展望台から見えるかもしれないと思い、そちらへも行って みました。

 展望台からはやはり先の地点のようには見えません。けれどもやはり樹木の 両脇に白いものがあるように見えます。相当に微妙ですし、先入観のようにも 考えられます。とりあえずここでも撮影だけしました。そんなわけでバタバタ していると12時を過ぎました。もう一度最初の発見地点へ行きます。やはり 白いモノは見えます。ここが一番です。近くに杭が1本落ちていたので、その 地点に立てておきました(^^;

 フィルムも全て尽き、12:30になりました。発見から2時間近く経過し ていることに驚きながらも満足感に浸っています。南西からは雲も迫っていま したので、今度こそ本当に下山することにしました。

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4.現地検証を終えて

 私はあれが富士山だと信じています。

 昨年の10月に大川入山から富士山を見たときもチラリと白いモノが見えた だけでした。標高などは大川入山が断然有利ですが、見える位置が仁田岳の横 あたりなので、窓よりもかなり高いのが難点です(それでも白いモノは今回よ りは大きく見えました)。

 そんな経験もあって、今回の白いモノが直観的に富士山のように思えてなり ません。あの輝きは雲などでは無いと思います。太陽が高くなって富士山の頂 の雪を照らした光とは考えられないでしょうか。2時間もの間それが同じ位置 にあったことも有望です。

 もしあれが富士山だとしたら。  富士山は昔からそこに見えていたはずです。けれど肉眼で認識できるような ものではないし、それを見た人はいないに違いありません。深田久弥氏も全く 意識しなかったことでしょう。けれど皆さんの科学的な検証が前提にあって、 見える可能性を信じていたから得られた結果なのです。一人で満足しようなど とは思ってもいません。ある意味では科学の成果です。

 できればもっと鮮明な写真が欲しいです。粗悪レンズでない機材をお持ちの 皆さん。挑戦されませんか? 杭が目印ですよ(^^;

 さて、下山後は麓の「宿り木の湯」にはいりました。400円也で空いてい ました。早く報告せねばと思いつつ、少し落ちつきたい気持ちだったのです。

 今も手元の写真を見ています。来週にはポジも出来上がります。  山尾さんにお送りして判断を仰ぎます。よろしくお願いします。

 今や蛇峠山は、FYAMAPに欠かせない山ですね(^^)     おわり

(1996年9月26日 FYAMAPに掲載)

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