上高地は雨のち晴れ '96秋

 

 10/12(土)〜13(日)と1泊で上高地へ行ってきました。

 職場の同僚4人を引き連れて、私を含め5人の山行(?)計画です。12日の午前3時に集合し、高速道路経由で沢渡へ向かいました。天気予報によれば 間違いなく雨・・・。けれども、夜空に光る星にわずかな望みをかけました。松本ICを降り国道158を西進。駐車場のある沢渡に到着したのは6時過 ぎでした。タクシー運転手さんに「いい時間を逃す」とせかされながら、あわてて乗り込みます。この時間はまだクルマも少ないとはいえ、それども何台もタクシーが走っています。釜トンネルを抜けると焼岳の入道のような頭がヌッと現れます。麓の木々は すっかり黄葉しています。「わぁ!」と皆から歓声があがりました。大正池の 上には水蒸気が帯状に浮かび、独特の景色を形成しています。運転手さんはこ れを見せたかったようです(^^)。少し行くと今度は正面に穂高連峰が姿を 現しました。「おぉ!」と叫んだのは私でした(^^;

焼岳と朝もやの大正池

 この日の宿である大正池ホテルに到着。荷物を預けてリュックで出掛けるこ とにします。あいにくの曇り空とはいえ焼岳ははっきりと見えています。思わず期待を膨らませて池のほとりに出ました。ところがどうでしょう。このわず かな時間の間に穂高岳にガスがかかっています。とりあえず皆で朝食をとるこ とにしました。空模様はどうにも怪しいのです。この日は焼岳山行の予定なのですが、迷い ました。メンバーは昨年の大川入山山行の人員+新人1名で、初心者ばかりな のです。とりあえず分岐点である田代橋に向かいながら決心しました。やはり 焼岳山行は中止!! メンバーからは残念がる声も聞かれましたが、ほとんど雨が降ることは間違 いなく、気温も低いので雪だって降るかもしれない。足場だって良いとは思え ない。皆の装備も万全とは言いがたい。あえて行くのが無謀といえましょう。 変わって梓川沿いを上流へ向かって歩くことにしました。

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河童橋付近からの穂高連峰

梓川途中で、明神岳をバックに

 田代橋を渡って、梓川の右岸を河童橋までたどります。とにかく人が多かっ たのですが、やはり河童橋付近でピークに達しました。我々はすぐに通過する ことにし、左岸に渡り返して上流へ進みます。そうして明神館の前に着きまし た。大正池ホテルを出発したのが7時半だったのですが、どういうわけかもう11時を過ぎています。ベンチが空いていたので、昼食をとることにしました。心配していた雨もまだ降ってきません。昼食は皆が持参したおにぎりやパンを出し合って食べまし た。あとは湯を沸かしてスープやコーヒーなどを飲みます。日が差さないので 温かいものがうれしいです。

徳沢園前

新村橋

 十分に休憩したのでさらに上流へ進みます。途中に徳本峠への分岐がありま した。この峠も山行の候補にあがっていましたが、今回はやはり通過します。 そうして徳沢まで行きました。徳沢園前は随分にぎわっています。ちょうど運 が付いたのか「真空車」が作業をしていて、独特の芳香が強烈に漂っていたの が印象的でした(^^; 時間はまだ午後2時になっていませんが、あたりは暗い感じになっていまし た。ここまでが限度です。引き返すことにしました。新村橋を渡って右岸に出 ます。するとついに空から雫が落ちてきました。久しぶりにカッパを使用する ことになります。このあたりは人も随分少なく、雨ということもあって静かな 散歩となりました。草木が生き生きしているように見えました。

徳本峠方面

明神橋

 雨は「シトシト」と降っているのみであり、それほど苦にはなりません。む しろ心地よささえ感じられます。明神橋の手前まで来ると、対岸の上に徳本峠 が見えています。非常にはっきりした鞍部で、そこから派生する谷に沿って紅 葉しているのがきれいです。振り返ると明神岳にガスが湧いて神秘的な様相を 見せています。明神池も通過してひたすら河童橋へ向かいました。平地とはいえ朝から結構 歩いているので、皆ちょっとバテ気味です。それでもホテル到着をあまり遅ら せるわけにはいきません。ようやく河童橋を通過し、バスターミナルまで到着 したのは午後4時頃でした。皆が疲労しているので、タクシーを頼むことにし ました。ところが1時間以上の待ちという話し。ホテルまで歩いても1時間は かかりません。相談した結果、やはり歩いて行くことになりました。

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雨の河童橋付近にて

 バスターミナルから大正池ホテルまでは、最短ルートである車道を歩くこと にします。雨が降り薄暗くなってきているのですが、この狭い道をタクシーや バスが走っていきます。何度かヒヤリとしました。疲れている足も早くたどり 着きたい気持ちによって惰性で前へ出ています。やがて右手に大正池が見えますが、なかなか建物が見えません。今どのあた りなのか、どのくらい歩けば着くのか。濡れ鼠になりながら考える気持ちも起 こらずひたすら歩きました。時間的には40分程度でしょうか、突然に建物が 現れました。あぁ、やっと着いた。感激もなく安堵を感じました。フロントでチェックインの手続き。乾燥室があり雨具などを乾かすことがで きました。5時前に到着し、食事は7時とのこと。何よりも風呂で温まりたい 気持ちが大きく食欲は二の次でしたので、助かりました。部屋へ入ると早速に 風呂へ直行しました。5人程度が入れる風呂ですが、明るければ焼岳など外の 景色が見えそうです。とにかくホッとした瞬間です。

 部屋へ戻るってベットに横になると、たちどころに眠気が襲いました。それ でも7時前には目覚めて食事に行きます。これがなかなか豪華な内容でした。 とりわけて高級というわけではないのですが、種類も量もたっぷりあって満足 できます。皆すっかり上機嫌でした。その食事も終わって部屋へ戻ると、たち どころに眠ってしまいました。夜中や明け方に数度目覚めました。明け方にはまだ外で雨音がしていました ので、今日も雨だなあと思いながらまた眠ります。そうして朝7時までたっぷ りと睡眠をとってしまいました。まだ眠いまなこをこすりながら窓の外を見て 目を疑いました。日が差しているではありませんか!部屋が山側でしたので、 廊下へ出て反対側の窓を探します。するとどうでしょう。焼岳にまばゆいほど の朝日がそそがれています。これはと思いカメラを持って外へ飛び出したので した(^^)

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翌朝の焼岳と大正池

 池のほとりへ飛び出すと、やはり穂高連峰も見えています。とはいえ飛騨側 からガスが湧き出て一部を覆っていますが、それでも素晴らしい眺めでした。 雨が洗った空気の向こうに、焼岳も穂高連峰もひときわ輝いて見えました。この二日間は雨を覚悟していただけに、あまりにもうれしい誤算です。空は まだすっきりしていませんでしたが、日が差しているというだけでうれしく感 じてしまいました。戻って朝食としましたが、皆で窓際の席に座ります。そこ から正面には焼岳の大きな姿が望めるのです。

田代池付近からの穂高連峰

 食事を終え出発準備。もう雨具は必要ありません。再び河童橋方面へ歩いて いきます。大正池〜河童橋までは「自然観察路」なる歩道が整備されており、 その道をたどっていきます。それにしてもこの道がすごい人、人、人。前の人 の頭越しに穂高が見えます(^^; 田代池を過ぎると道が分岐します。梓川沿いと森林の中の道ですが、我々は 昨日前者を通ったので、この日は後者をとりました。ほとんどの人が梓川沿い の道へ行くため、森林ルートは大変静かでした。やがて梓川の左岸に突き当た ります。ここからの穂高がなかなか見事です(お薦め)。

穂高の稜線に雪が!

河童橋付近から梓川上流を見る

 そこからバスターミナルまではすぐでした。帰りのタクシーを予約しようと しましたが、沢渡までの予約は断られました。仕方がないのでとりあえず河童 橋まで行きます。そこでしばらくフリータイム。私は写真にいそしみました。 皆は土産を買ったり、ビジターセンターを見学したりしていたようです。おな じみ「カッパの涙」も買い求めていたみたいです。11時半にターミナルへ戻るとまだ行列はできていません。すぐにタクシー に乗り込みました。そこまでは順調でしたが、そのタクシーが出られないので す。なんとクルマが詰まっている!!ようやく動き始めましたが反対側(すな わち上高地に向かうクルマ)はずっとつながっています。どこまでかと思って いあたら、なんと釜トンネルの手前までつながっていました(^^;

 釜トンネルで焼岳の入道頭を見送り、上高地に別れを告げます。結局山登りはしない山行でしたが、それはそれでなかなか思い出深いものとなりました。雨の上高地もまたよし。その後に迎えた晴れ間もまたよしです。今回、秋の上高地を初めて訪れましが、黄葉の山々の美しさに再発見したよ うに思います。四季折々の表情を訪ねるのも、山行の醍醐味ではないだろうかと改めて感じました。  (終わり)

 

(1996年10月15日〜10月18日 FYAMAPに掲載)

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