展望特異日の御在所岳 '96秋

 

 展望特異日の11月3日。関東はあいにくの曇り空だった様子ですが、すで に展望報告もいくつか寄せられています。私も山へ行ってきました。今回はポッポ倶楽部の、きさくさん、風人さん、のご案内で念願の鈴鹿へ初 挑戦してきました。場所は鈴鹿の代表格「御在所岳」です。

1.鈴鹿は山脈である

 「山脈」という名称が地図に載っている山域が、日本にどれくらいあるので しょうか。日本アルプスの3つの山脈は言うまでもありませんが、他には日高山脈と奥羽山脈くらいではないでしょうか。そしてこの鈴鹿山脈です。鈴鹿は最も小粒な山脈です。標高は1000米余、南北に3〜40Kmとい うところでしょう。しかし西の琵琶湖(近江盆地)、東の伊勢湾を隔てて文字通り脈々と山が連なっています。「鈴鹿7マウンテン」などという言葉を聞け ば、山好きなら心踊ってしまいます。この山脈が大都市名古屋からほど近いところにそびえているのですから、多 くの人が訪れることもうなずけます。私も東海地区に住む者として、かねてか ら行きたい気持ちが強くありました。そして今回、FYAMAPでは鈴鹿の主 ともいえる、きさくさん、そして同じポッポ倶楽部の風人さんのご案内で実現 の運びとなったのです。(皆FYAMAPメンバーなので、ミニオフと言って も良いかもしれません)

 今回の対象となったのは鈴鹿の主峰ともいえる「御在所岳」(1210m)でした。ロープウェイが山頂まで通じていることで有名ですね。私はずっと鈴鹿の最高峰だと思い込んでいましたが、御池岳(1241m)や雨乞 岳(1238m)の方が高いです。けれども山脈の中央に堂々とそびえる山容 は、主峰にふさわしい風格を持っています。山麓の湯の山温泉郷からは、いくつかのルートが通じています。今回とった のはメインルートともいえる「中道」から「裏道」を周回するコースでした。 晴れあがった空の下、期待を膨らませながらの山行です(^^)

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2.御在所岳を登る

 御在所岳には「表道」「一ノ谷新道」「中道」「裏道」等、豊富な登山道が あります。さらにロープウェイもあります(^^; 今回の登りに使ったのは、尾根筋を一気に高度をあげていく「中道」。この ルートは展望コースでもあります。正面に高々とそびえ大きな岩々が点在して いる山に向かって歩きはじめました。風人さんは先々週の小秀山でネンザしており、ドクターの許可は得たものの 足に気遣いながらの山行です。登り始めはやや寒いほどだったのですが、動き 始めると汗が出てきました。花崗岩が削れて谷状になったところが続きます。 風人さんはやはり調子が出ない様子で、スローペースで行くことにしました。やがてオバレ岩という、巨大な岩の柱が出現。大きな岩がゴロゴロして展望 が開けた場所で、休憩することになりました。眼下に三重から名古屋にかけて の平野や伊勢湾が見下ろせます。伊勢湾の向こうには知多半島、その向こうに は三河湾と渥美半島まで見えます。

 それよりも感激なのは山々の展望です。すぐに恵那山が目に入りました。そ の右には雲が多いものの南アルプス方面が見えています。左には中央アルプス の稜線がはっきりとわかります。少し場所を移動してみると御嶽が見え、その 左には乗鞍岳も。そしてその左にも峰々!槍・穂高連峰に間違いありません。 されに左の特徴的なとんがりは笠ヶ岳です。その左は黒部五郎岳などと思われ ます。すごいすごい。上へ行けばもっとよく見えるということで期待を胸に登っていきます。次な る展望ポイントは地蔵岩。大きな岩柱の重なりの上に、頭のような岩がひとつ 乗っかっている奇岩です。ここも展望が素晴らしい。白山も見えているようで す。鈴鹿山脈の山々もほとんど姿を現します。

 この先に待ち受けていたのはキレット。ちょっとした岩場のある鞍部です。 御在所岳はとにかく大きな花崗岩がゴロゴロしており、またその砂礫が白く撒 かれています。中央アルプスや鳳凰山に似ていますね。きさくさんによれば、 鈴鹿でも独特の雰囲気を持つ山だそうです。ここからがまた急勾配。あえぎながら登っていきます。左手には常に鎌ヶ岳 の特徴的な姿が見えています。鈴鹿のマッターホルンという例えもありました が、ペン先のような形をしています。突然階段梯子が現れ、それを登ると舗装路?!  そうやら山頂部の端に到着です。展望できる場所がありますので、富士山が 見えるかどうか確認しました。しかし東方向いは雲がわいていて、南アルプス すら隠れがちです。結局富士山は見つけられませんでした(;;)山頂を歩いていくと異様な光景。ロープウェイがあるので当然ですが、普通 の格好の人たちがいっぱいです。翌日の新聞によれば、この日のロープウェイ の人出は今年最高だったとか。深田久弥氏が「遊園地化」されたとして百名山 候補から外した現実です。私たちは静かな場所を求め、国見峠方面へ下ること にしました。

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3.国見岳

 御在所岳のすぐ北にあるのが国見岳。御在所岳から見ても、結構人が多いのがわかります。それでもここ御在所岳よりはかなり少ない。とりあえず鞍部の国見峠まで下りました。そこから昼食の場所を探しに国見岳方面へ登り返します。きさくさんと風人さんには心当たりがありそうです。両側に熊笹の繁る展望のない道を登ってい くと、いきなり白砂の開けた場所に出ます。ここが候補場所だったのでしょう か?けれどすでに人がいます。ここからの眺めがまた素晴らしい。御在所岳の北東斜面の岩壁が一望できる のです。そうです、クライマーの殿堂である藤内壁です。若い頃に登ったこと があるというきさくさんが、細かく解説してくださいました。

 肝心の昼食はもう少し先。ほぼ平坦な道を行くと、国見岳の頂上に着いてし まいました。期せずしてこの日二つめのピークです。ここにも大きな花崗岩が あり、東側の展望が開けています。西側はやや樹木に遮られます。昼食をとる ことになりました。3人それぞれで思い思いのメニュです。そうしている間にも、入れかわり立ちかわりに人がやってきます。とりわけ て混雑というほどではありませんが、以前はもっと人の来ない山だったという ことです。

 腹ごしらえが終わり一服した後、下りにかかります。途中の分岐に「石門」 という標識があったので行ってみることにしました。分岐から数十米のところ に確かに巨大な岩が門のように建っていました!! これは見事です。おおよそ自然のものとは信じがたい、規則的に「[ ̄]」 の型に岩が積み重なって中は通路になっています。高さは数米はありました。 上の屋根の部分には乗ることが可能で、平に6畳間程の広さがあります。次回 の昼食場所候補ときさくさんたちは言っていました。石門を後にすると国見峠まで戻り、そこから「裏道」を下ることにします。

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4.晩秋の下山路

 「中道」もそうでしたが、この登山道は水が染み出してして湿っています。 ときには小さな流れにすらなっています。しばらく行くと沢のすぐ横に出ます が、山頂からさほど下っていないのに水量が豊富なのに驚きます。けれど山頂 の開発の様子を見た後では、とても飲用する気分にはなれません。山頂近くではすでに木々の葉は散った後でしたが、下るにつれて紅葉した葉 が見え始めます。沢沿いの道ということもあって、日本の秋を感じるような気 持ちの良いコースでした。右手を見上げれば大きく藤内壁がそびえています。午後になってもまだ沢山の人たちが登ってきます。ロープウェイがあるから この時間から登っても安全に降りられるということなのでしょう。とにかく次 から次へとすれ違う人ばかり。もちろん下山している人もいます。朝から見か けたような人たちを抜いたり抜かれたり。

 途中で休憩していると、登山ルックではない女性(若い)二人に、下まであ とどれくらいかかるか聞かれました。ロープウェイで登って下山は足でという ことのようです。このルートは足元が悪いということもなく、彼女たちもそれ なりの格好でしたので大丈夫なのでしょう。抜きつ抜かれつのおばさんが一人。気さくな人で話しかけてきます。なんと 「学生さん?」と訪ねられました。きさくさんが以前に学生と間違われている ので思わず大笑い。でも今回は風人さんに向けられた言葉かな?そんなこんなで、水場やクライマーが主に使うテント場を通過し、藤内小屋 に到着しました。かなり立派な営業小屋です。きさくさんの話しでは風呂もあ るとのこと。各山岳会の募集ポスターなどがありました。

 ここからは遊歩道に近い雰囲気の道です。きさくさんの、中道への分岐があ るはずだというひと言。すぐにその分岐が見つかりました。予定変更でそちら のルートをとることになりました。ペンキやマークがはっきりしています。間違えることは無いだろうと安心し て進んでいたら、だんだん傾斜のきついところに来ました。そしてザレ場の急 斜面にぶちあたります。これはどう考えてもルートではない。支えとなりそう な岩に手をかけた風人さんでしたが、その岩がとってももろくてズルリと剥げ 落ちました。捻挫どころか怪我をするところだったと冷や汗です。苦しみながらも、その斜面を上まで登り切ります。ホッと一息。でも本来の ルートはいずこ。いったん反対方向へ行きかけましたが、きさくさんの好判断 ですぐに戻ることができました。さすが鈴鹿の主ですね。間違えたルートには 「きさく新道」と名付けました(どこかで聞いたことが・・・)。そうして誰も来ない道を進んでいくと、1組のパーティとすれ違いました。 どうやら中道への合流は近そうです。下りばかりだと安心していたところへ、 思わぬ登りに出くわして疲れています。ロープウェイの下をくぐると、やがて 目指す中道に到着しました。一安心です。

 中道で最初に出会ったのは、普通の格好をした若いカップルでした。足元を 見ると革靴とヒール靴(^^; よくもまあここまで降りてきたものだと感心 してしまうのでした。その先はきさくさんが「ジェットコースター」と称する、花崗岩のV字谷の 道です。足場はしっかりしているので思わずスピードが出ます。グングン高度 を下げるので、すぐに登山口のある鈴鹿スカイラインまで着きました。振り返 ると、相変わらずの晴天の中に御在所岳がそびえていました。

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5.帰還

 クルマに乗って湯の山温泉郷を抜けていきます。道路には実に多くの登山者 が歩いています。御在所ロープウェイ乗り場を過ぎると、反対車線のクルマが 渋滞しています。まだこれからロープウェイに行こうという人たちでしょう。我々はその反対を悠々と帰っていきます。途中温泉に寄る予定です。ところ が目的の温泉に着くと満車で入れません。どうせ入っても芋を洗うような人で しょう。すぐにあきらめてそのまま帰路につきました。それにしても渋滞は延々と続いています。いったいどこまでと思っていたら ICでもまだつながっていて、その最後尾を見ることができませんでした。翌 日の新聞によれば今年一番の人出だったとか。早出の行動が功を奏しました。こうして無事に帰路についた我々です。

 私にとっては初めての鈴鹿山脈。御在所岳はその山頂を除けば大変面白みの ある山です。また展望も大変優れています。きさくさんには是非、展望百名山に推薦していただきたいですね(^^)御在所岳は比較的派手さのある山でした。他の鈴鹿の山はもっと別の雰囲気 を持っているようです。御池岳、竜ヶ岳、雨乞岳などは、いずれも山頂部が笹 で覆われたなだらかな山だそうです。また藤原岳は花の名山として有名です。御在所岳は特にそうなのでしょうが、若い人がたくさん登っていることに驚 きました。きさくさんの話しでは、他の山もそういう傾向があるそうです。3 番会議室で、山登りはダサイかという話しが出ていますが、鈴鹿を訪れる人々 を見てみると、そんなことないぞという気がしてきました。

 東海には根強いファンが多いと言われる鈴鹿の山々。その理由を垣間見たよ うな気さえしてしまうから不思議です。私もまた機会があれば行ってみたいと 思っています。きさくさん、風人さん。またいつかご一緒しましょう(^^)

 (終わり)

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