春うららか。桜舞い、風そよぐ。
ある時期になれば自然にやってくる入学式。
今日からここ、三原高校に通うことになった北野仙一はゆっくりと校門をくぐる。
時間的に遅いのだろうか。辺りには数人しかおらず、慌てて体育館の方へと急いで行く。
仙一は見た目も中身も平凡そのもの。選んだ学校もごく普通の高校。良くもなく、悪くもないといってところだ。
受付はもう済ませてあるのであとは会場へと進めばいいのだが、なんとなく式に出る気が無く、体育館の手前に咲き誇っている桜の大樹を眺めていた。
そして眠気も襲ってくるわけで。端に置いてあるベンチに腰掛ける。
今日は入学式  なのに。
「まぁ…いいか」
そんな一言で終わらせてしまってはいけないのだけれど、初めから堅苦しいものに出る気力などありもしない。
長くて疲れる校長の話より、見事な桜吹雪の中で女の子と一緒にいる方がどれだけいいか。






    女の子?





「今日は」



花弁の中で。



「いい天気ですね」



その少女は。



「お花見ですか」



俺の隣に。



「今年の桜は今が見頃なんですよ」



座っていた  






      






一瞬の強風に細く、色素の薄い髪がなびく。
にっこりと微笑み、少女は巨木に目を移し細める。
「貴方は、知っていますか?」
「何…を?」
「この学校の不思議を  です」
ずっと桜を見つめたま、ゆっくりと話すこの口調が、なぜか懐かしい。
「不思議……?」
「不思議があるんですよ」
いつのまにか腰を上げ、仙一の前に立っているひとりの少女。
「君は    









「私、貴方のこと好きですよ」









初めての高校生活。
入学式の日に。






俺は見知らぬ少女から告白された。







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