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      水の伯爵の館からすごすごと帰ってきた後、ジャスティーンは妙に片付いた自分の部屋に戻った。 
      結局何の手がかりも掴めなかったことに落ち込んでしまう。 
      ボスッとベッドに仰向けになって寝ころび、大きく息を吐き出した。 
       
      「…何も分からなかった」 
       
      目的も、犯人も、何もかも。 
      水の伯爵に関しては全て信じられるわけではなく、いまでも不信感はぬぐえない。 
      そして彼が最後に呟いた言葉も規模が大きすぎて掴みようもないのだ。 
       
       
       
        地の一族。 
       
       
       
      決して無関係ではない  それどころか大いに関係する、ジャスティーンにとってもう一つの一族である。 
      以前も何度か関わりを持った相手なのだ。またなにかを仕掛けてくるのも不思議ではない。 
      だがしかし。手がかりも何もない状態では特定することもできない。 
      ただ分かるのはおそらく魔術師の仕業ということだけ。 
      「犬に噛まれたとでも思っておくべきなのかしら」 
      悪戯、というにしてはいささか悪趣味だけれども。 
      ひとまずは様子を見るしかなさそうだ。 
      苛立ちを消すようにため息をつき、天上を見上げる。 
       
       
       
       
       
       
      と。 
       
      ふと、何かを思い出した。 
       
      そんな気がする、ような。 
       
       
       
      沈黙時間の10秒後。 
       
       
       
       
       
       
      「あーーっ!ダリィとリディオスのこと、すっかり忘れてた…!」 
       
      瞬時にしてさっきまでの気分が吹っ飛んだ。 
      確かダリィの部屋に二人を残してシャトーとだけ水の伯爵に会いに行ったのを思い出し、慌てて飛び起きる。 
      そうだ。そうだった。 
      あの場ではそれが最前だと思って疑わなかったが、よくよく考えると大変なことだったのかもしれない。 
      「怒ってる…よねぇ」 
      間違いなく。断言できるほどに。 
      一応リディオスがいたものの、あの後どうなったかはジャスティーンは知らない。というより、知りたくない。 
      もしうまくリディオスが逃げられたとしたら…。 
       
      ぞーーーーーっ。 
       
      嫌な汗が背筋を流れた。いや、握りしめている掌は汗でしめっていたのかもしれない。 
      考えないよう首を横に振る。 
      「ひとまず会いに行くしかなさそうね…」 
      ゴクリ、と唾を飲み込み、ダリィの部屋へと重い足を引きずりながら歩いていく。 
       
       
       
      いざとなったらレンドリアでも差し出せばいい。 
      切り札は最後までとっておくべきなのだ。 
       
       
       
       
       
       
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