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      結局行き着く先はここなのだろう。 
       
      予想したくはない場所。 
       
      予感がしていた場所。 
       
       
       
      それは  喩え、偶然であったとしても、だ。 
       
       
       
       
       
       
      ジャスティーンとシャトーは、水の伯爵の館に今来ていた。 
      ここになぜダリィがいないかと言えば、もちろんジャスティーンが置いてきたからである。 
       
      「なぜ私が行ってはいけないのですか!」 
      「ほ、ほら……リディオスがいるじゃない。彼女を水の伯爵の所へは連れて行けないし、だからといってここに一人で置いてはいけないわ。もしかして狙われていたのがリディオスかもしれないでしょう?」 
      「それは  !」 
      「ね、だからダりィ。あんたにリディオスを頼みたいの。」 
       
      (本当はあんたがついてきたら話がややこしくなるからだけなんだけど) 
       
      本音は言わないが吉。 
      納得はしていなかったみたいだが、宝玉を押しつけてきたのだから当分は大丈夫だろう。 
      微妙に浮かれているダリィの隙を見てシャトーにお願いをし、ついてきてもらったのだった。 
       
       
       
       
       
       
      笑みを絶やさない目の前の人物は、ジャスティーンの話を聞いても表情は変わらなかった。 
      相変わらず何を考えているのか分からない顔。魔術師の顔なのだ。 
      これはジャスティーンの苦手とするものだった。 
       
      「…それで、どうして私の所に来たんだい?」 
       
      カチャリ、とカップを置く。 
      手を組み、ジャスティーンを見据える瞳は笑っているのか、怒っているのか、何も考えていないのか。 
      ただ、自分を見透かしているようで恐ろしく  腹立たしい、とジャスティーンは思う。 
      そんな彼女を弄んでいるのかもしれないが、それは本人の知ったところではない。 
       
      「水の伯爵なら…何か知っているかも、と思って」 
      「おや、君のことだから私を犯人だと思って来たのではなかったのかい?」 
      「  っ!」 
       
      図星。 
      思わずうっ、と唸ってしまい、もはやバレバレである。 
      隣のシャトーを見るが、こちらはこちらで何を考えているのか分からない。 
       
      「これまでのことを考えればそう思ったっておかしくはないわよ…」 
      「いつも要らぬ事に首をつっこむ君が悪いのではないのかね?私はいつも忠告をしてあげているのに」 
       
      (忠告?…いつもあたしをからかって遊んでるだけじゃない!) 
      自分でも眉間にしわが寄っているのが分かる。 
      手のひらを握りしめ、次の言葉を言おうとした時  冷たいモノが手の甲を覆った。 
       
      「ジャスティーン」 
       
      ビックリして声の方を振り向くと、青く澄んだ瞳に射抜かれる。 
      ジャスティーンの手に触れているのはシャトーの手だった。 
      すっと、体温が冷えていくと同時に、頭の中が冷静になっていく。 
       
      「落ち着いて、ジャスティーン」 
      「う、うん…」 
      「水の伯爵、あなたに聞きたいことは一つだけ」 
      「なんだい、シャトールレイ」 
       
      双方の瞳が重なり合う。 
       
      「あなたはこのことに関係しているの?」 
      「それは……事件の首謀者、ということかい?」 
       
      笑みは変わらぬまま、だが瞳の奥は何を映しているのだろう。 
       
      「そうであろうとなかろうと……少しでも関与するところがあるのなら」 
      「なるほど」 
       
       
       
      「残念だが、私は何も知らない」 
       
       
       
      ほんの一瞬、シャトーの視線が強くなったような気がしたが、すぐに瞳を閉じてしまったのでジャスティーンには分からなかった。 
       
      「…そう」 
       
      一言呟くと、彼女は席を立つ。 
      ジャスティーンもあわてて腰を上げるが、彼はなにも咎めるような言葉を言わなかった。 
      扉を開け、部屋を出ようとした  それと同時に 
       
       
       
       
       
       
      「ああ、そういえば…」 
       
       
       
      扉が、閉まる。 
      残る、静寂。 
       
       
       
       
       
       
        地の一族がこの頃何かしていると聞くね。 
       
       
       
       
       
       
      確かに、そう言っていたような気がするのだけれど。 
       
       
       
       
       
       
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