「お前はどうするんだ?」
午前中の授業も終わり、食堂に行こうか購買部でパンを買ってこようかどちらにしようと悩んでいる仙一の肩を叩くのは毎度のことながら景だった。
彼にしては突然な質問だと思いながら意図を探ってみる。
「…何が?」
「オイオイ、惚けたこと言うなよ。授業中、回ってきただろ?」
授業中?…回す?
はてなと首をかしげる友人に、景はわざとらしく肩を落とす。
「悪い、ずっと寝てた」
だからきっと仙一をとばして次の奴に渡したに違いない。
「で、何が回ってたんだ?」
「ああ……コレだ」
ポケットから何十にも畳まれた紙を受け取ると、そこには。



『男子専用  女子見るべからず』



「くだらない内容みたいだな」
「回しモノに求めるなよ」
ニヤニヤと笑う景を横目で見据えながらも、紙を広げる。



「……ミスコン?」
「平たく言えばそうなるんだろうな」
ああ、お決まりのアレですか。
この学校にもあるとは、なんだか複雑な気分になってくる。
「で?」
「ナンダ?」
「これがどうかしたのか?」
「お前ねー…」
ココまで来たら聞くことなんて一つしかないだろう、とため息とともに言われれば、さすがに仙一もムッとする。
「誰に入れるんだよってことだ」
「……拒否権はないのか?」
「男なら参加しろ」
残念ながらないようだった。
「さてと、昼飯食いに行ってくる…」
「オイ、コラ!」






後ろで怒鳴る景を無視して教室を出ると、そのまま中庭へ足を運ぶ。
「昼飯食うんじゃなかったのか?」
その後をついてくる景に対して一別しながらも、気にしようとはしない。
「お前のつまらない話を聞いて気が変わったんだ」
「そりゃ、悪いことをしたな」
たいして反省してもいない声は多少耳障りな感じがしたが、この際どうでもよかった。
どんどん進んでいく。
「どこまで行くつもりだ?」
「誰もいないところ」
「ふーん。だったら無理だな」
何故?と仙一は首を傾けると、景は苦笑した。
「俺が付いていくからさ」






結局仙一の願いは叶わぬまま、桜の巨木の下で景と昼食をとることになった。
その分、彼の奢りと言うことになったのだが。
「見事だな」
「その辺のと変わらないだろ」
「……風流とかそういうものはないのか」
「ヤローと花見して風流もクソもあるか」
「杏子でも連れてくればよかったか?」
「それだけはやめてくれ…」
余計五月蠅くなるのは火を見るより明らかであろう。
それこそ風流だの、情緒だのといっていられない。
「だったら彼女の一人や二人つくれよ」
「どうしてそこへ話が飛ぶんだ…」
大体彼女が二人もいてどうするんだよ、と思うが口にはしなかった。
「そんなことは自分で考えたまえ。暇な仙一君」
「悪かったな」
「誰も悪いとは言ってない…って、お?」



      



どうした?とは聞かなかった。否、聞けなかったのだろう。






「よかったな、ちゃんと美人がいたぞ。とびっきりの」









確かに、アレは。



      告白女…だ。