これでよかったのかな…






何度も何度もその言葉だけがうずいていた。
チャプンと小川に素足をさらし、つま先から伝わってくる冷たさを感じながらふと見上げる。
もう日が落ちてからずいぶんと立つ。夏といえど辺りは薄暗く、月光だけが彼女  南の影をくっきりと水面にに映しているだけだ。






親戚に引き取られてこれで3年目になろうとする。
別に愛想が尽きたわけでもない。嫌いではなくむしろ好きだった。
義母さんはいつもやさしく接してくれるし、義父さんもなにからなにまで全て整え、不自由のない暮らしを与えてくれた。
だが、重すぎたのだ。
何もかも守られて、支えられて。
全てが強すぎて、今までのものが消えていく気がして……
さっきまではベットの上にいたのに、いつの間にか逃げ出してきてしまったのであった。



「心配…してるのかな…?」

迷惑かけちゃいけないのにね。



泣きたいのにため息しか出てこない。
「でも……戻っても迷惑かけちゃうだけだし」
笑ってみてといわれても、笑えない。怒らないのかと聞かれても、怒れない。
悲しみ・苦しみ・楽しみ・喜び……
心の中の感情は有るのに、表すことができない。
そのことでなんど周りを心配させたことか。



だが、しょうがなかった    生きていくためには。



捨てないと生きていけなかったから。否、受け入れるためには失わなければならなかったから。
今受け入れていたらこの状況は変わっていたのだろうか    
そう思ったが、あえて考えることはしない。
これ以上どうしようもないことを思っても答えは出てこないのだから。
後悔しようと、時に逆らうことなどできやしないのだから。
「覚悟が甘かったのかな」
「両親の死」を受け入れるため「感情を失う」ことを決意した。
それなのに、わずかにのこってしまった曖昧なものは、どうすればいい?






「誰か…教えてくれないかな」






ぽつんと消えそうな声でつぶやくと、体重を後ろに倒し土手の草原の上に横たわった。