ポタ ポタ

不定期なのか、定期的なのか、水滴が床に滑る音が聞こえることが、唯一時が動いていることを証明してくれる。
外は雨。雨。雨。
光はゼロ。有るのは、冷たくなったふたりの身体。そしてよれた包帯。
          
全身に響くノイズたち。

イ・マ・ナ・ン・テ…?

文字の欠片が一つずつ彼女の脳裏を横切っていく。
無意識なのかヒーリングは止まなかったが。
だが自分が今何をして、何を見て、どう思っているのだろうか?
もう一度、五月は口を開く。
「変わったな、清音  
濡れた手をシャツで拭い、そっと清音の髪に触れ指で挟んだ。
そしてもう片方で彼女のヒーリングを止めてやる。
「あ……」
触れられた部分が熱を生んだ。一つ、二つと。蛍の灯火のように。
優しく、暖かく。
「もういいから」
「…う、ん…」
何に肯定したのかのかも理解できない。
今にも意識が途切れそうで、なんとかつなげるのが精一杯である。
「清音」
「え…あ…」
放心状態の清音に少し苦笑をする。
    でもは伝えないといけない。
  ごめんな」
何に対して謝っているかなんて分からないけど、でも言いたかった言葉。
言わないといけない言葉。
これだけは言わないと…そう自分が言っているから。
「ごめん、清音…」
    !?」
だんだん手が力んでしまうのが分かる。
でも、そうしなければまたなってしまいそうだった。
「ごめん……」
目に入る真紅のピアス。
今なら総てを憎むことも、愛することもできるだろう。
チャラ…とチョーカーが音を刻むのを合図に、全身に力がこもった。






      っ!」
目の前が熱くて何も見えなくても、ちゃんと君さえ居ることが解れば  



「…お帰りなさい」
扉は開いてくれるのだから。
光はおとずれるだろう。






  ただいま」






だから、もう二度とこの手を離すことは無い、絶対に。









初めて思ったこと。



君が君で居てくれたことが自分にとって最大の幸せであることに、神様に感謝しよう。