詩持ち。
それはあってはならない存在。
本来なら天使の持つ詩は1つ。それ以上、それ以下もない。
たとえ位が高くとも詩は1つと限られている。
だが、不幸中の不幸、詩を幾つも持つ者が現れる。それが詩持ちだ。
その存在は恐れられ、この世の創世主  神すらその者の存在を認めていないだとか。
だから詩持ちは落とされる。
人と関わることを許されず、一人のままで……。









「お前……」
「ね。どうして私がここに住んでいるのか……分かるよね?」
無言のまま、ゆっくりと五月は目を伏せる。
「はじめはね、ちゃんと飛べたんだよ  って、一回しか飛んだことないけど」
くるっとまわり背中を見せる。そこには綺麗な純白の翼。
「別に恨んでなんかないよ。だってコレは当然なんだから。
中界に落とされたのもね、私を守るためなんだからね」
詩持ちは天人に狙われる。詩を奪われれば命を失うことと同じこと。
幾つ持っていたとしても全てを与えることはできない。
「だからしょうがないの。私はココにいないといけないの」



    今まで守ってきてくれた人たちに申し訳ないでしょう?



ふっと微笑んだ笑みはとても悲しそうでもろかった。
ようするに、そうなんだろう。
誰もが望まなくて、誰もが理解しているのに。
だけど。

「でも…俺は清音と一緒にいたい」


「うん」


「やっと記憶を取り戻せて…清音に会うことができて……これ以上望むのは罰当たりだけれど」


「うん」


「それでも  迷惑だとしても一緒にいたいと思うのは駄目か…?」



天人である自分がこんなことを思うのはおかしいだろうか。
天人であることよりも、人間だった心を大切にするのは愚かなことなのだろうか。


「駄目……だけど」
「…だけど?」



ゆっくり、目の前にいる五月を見据えて。



「そうだったら…嬉しいな…」






もう一度。人々のざわめきとにぎわいの中に入っていけれるのだろうか。
あのころの自分に。いつも彼と一緒にいた自分に。
高い空を一人で見ることなく、誰かと眺めていられるのだろうか。



「うん……そうだったらいいね」



戻れるのなら戻りたい。
望むなら    願うなら    









  空が飛びたいな……」









だからね。
全てを叶えるたった一つの方法。









「五月……目、閉じてくれないかな?」






アナタとワタシのために使うのなら、神様だって許してくれるよ。









一瞬の闇と光。
感じたことのない冷たさと暖かさ。















そして気が付けば俺は空の中にいた。